S.H.Figuarts 超サイヤ人孫悟空〈決戦の幕開け〉レビュー という名の苦言

 

フィギュアーツ ドラゴンボールシリーズ

S.H.Figuarts 超サイヤ人孫悟空〈決戦の幕開け〉 を触った感想を書きます。

否定的な意見が続くので、そういうものを見たくない人にはお勧めしません。

写真は雑に数枚しか撮っていないので、画像を通して商品の全体的な所感が知りたい人は、
はっちゃかさんのブログが分かりやすいのでそういったものをご覧ください。
https://hacchaka.net/archives/52126512.html

 

 

本商品で
悟空の、いわゆる「素体」が新たに更新されたわけだが、
どうも個人的には改良とも思えない変更箇所が多く
全体的に好きになれない代物だった。

以下、その箇所ごとに言及していきたい。

 

 

 

不満部分は色々ある、というか
基本的には全部なのだが

特に思うのは

・胴体部分

胴の内部の、隙間を隠すようなパーツが全くないため
少しのけぞると、すぐ隙間が出現する。

肩の可動範囲や首の伸縮など、優れた可動範囲を謳っていただけに
少しのけ反る姿勢を取ると空洞が出てくる仕様はどうなのだろう、と当惑した。

前にかがむ姿勢は、前の素体より深く前に倒せると言えなくもないが
見た目的な不自然さもあり、横から見ると特に違和感があった。

のけぞる際に隙間が出てくるように、かがむと同じように後ろ側に隙間が出るという事もあり見映えが悪い。

腰帯のパーツと、その上の道着部分が、一体となった軟質パーツになっているが
隙間を埋めるために
もう少し上方向にパーツを伸ばしたり
間に隙間を埋めるパーツを増やすなど、なんらかの改良の必要があったのではないか、と思ってしまう。

特にここに構造的な不備と改良の余地を感じた。
というか、本当にこんな仕様を良しとして製品化した事に驚いた
(素体として使い回す前提なのに)。 

 

・膝部分

 
確かに、前の素体の二重関節と比較すれば
見映え自体は良くなってると言っていいだろう。

可動範囲自体も、極端に下がってはいないか、同程度とも言えるだろう。

が、決定的に違ってるものがあり、
それは遊びやすさである。

膝を曲げる際に、一ヵ所クリックのような渋みがあり
曲げ始めは緩く、途中で一気に曲がる。

なので、途中の段階で止めて固定しておくのが難しい、もしくは気を遣う。

少し力がかかると伸びるか、完全に曲がるかの方に行ってしまうからだ。
例えるなら、ばね指のように、どちらか極端に動き、中間で止めるのにコツや工夫がいるという感じで
玩具としての不備というか不自由さを感じた。

以前の二重関節は見た目的には美しくなかったかもしれないが
可動機構に特に不満を感じた事は無い。

こうして単軸の膝に変えてしまう事によって
遊びやすさの部分で大いに差が生まれ、別物のような具合になった事は
好き嫌いが分かれる所であろうし

経年等を含めた耐久性の面でも不安や疑問が残る。

そうした事は時が経ってみないと分からないし、
そういう面では既に安定していて、今や主流となっている
別パーツでの二重関節という規定路線を崩す程に
見た目的な不満というものは多かったのだろうか。

自分としては見た目を含め今迄の膝に不満を感じていなかったし
そうした声をあまり聞いた事もなかった。

二重関節の機構を残したまま、見た目を自然な形に改変する、という方向性でよかったのではないか
というのが個人的な感想である。

以前の素体における、曲げた膝の頂点のみにカバーパーツを取り付けていた所を
パーツ全体を覆うような構造に変えるなど、
見た目と可動の安定性を両立する方法は
他にもあったように思うのだが。

遊びやすさで言えば前の素体の方が自分は上だと思うし
完全な改悪要素に感じた。

 

・つま先

 

つま先の可動部分の、切り込みが深すぎる。

これはこの原型師のクセだろうで、以前の上半身裸悟空も似たような物だったように記憶しているが

こんなに深く切り込んでは、角度が急になるため接地させる事が難しく
ポーズを取らせると
つま先を最後まで曲げるか、全く曲げないかのどちらかに自然と収まっていくのではないかと思われる。

これは上述の膝の機構と同じような話だが、それ以上に酷く、

中間で止められないし、曲げぎった際は
かなり極端に踏ん張ったポーズになり、外観はもう人間の足のそれではない。

横から見たらそれが分かりやすい。ポーズの選択肢の幅が狭く、見映えが非常に悪い。

改めてよくこんなものが通るなという要素であった。

前の素体からの完全なる改悪だと思えるし、原型師の腕を疑うと共に、担当者への呆れを禁じ得ない。

つま先にここまでの変化は必要だったのだろうか。

 

・肩

もう今迄の箇所だけでお腹いっぱいなのだが

特許を出願してる?だかして息巻いてるらしい肩の部分もせっかくなので言及しておく。

確かに肩が内側によく動くんでしょう。
かめはめ波なんかのポーズは前より決まるんでしょう。

で、それを活かすためにか、胴体の道着部分が軟質パーツになっていて
青インナーと肩の間を隠してる構造になっている。

インナーと道着の間に隙間があるので、真正面でなく斜め前から見ると
道着だけ浮き出していて違和感がある。

そして、パンチをする前動作のような
振りかぶったポーズを取らせると特にその隙間が大きくなって
青のインナーがタンクトップなのかと空目するような見た目になる。

 

 

実際はタンクトップではなく
半そでのインナーを着てるから、肩口から青いインナーが覗いてるわけで、
可動のために見た目を大きく犠牲している構造と言える。

限られたポーズの中で、真正面から見た際に見映えは良いが
のけ反らせたり、斜め前から見たりした場合、簡単に違和感のような物が発生する、

というのがこの素体全体に対して抱く印象である。

 

また肩口から覗いてるインナーにしても、引き出し機構になっているため
動かしていると肩のパーツの中に隠れてしまい、露出部が少なくなってしまう事も多い。

そのためわざわざ指で引っ張り出してインナーを露出させないと見映えが悪いといった
一手間が必要になる。

ここももう少しインナーのパーツ部分を長くする、
インナーが引っ込み辛くするなど、
改善の余地があったのではないだろうか。

 

・色

 

最後に、機構の話から離れて、着色や色の話をして終わりにしたい。

 

インナーの青と、腰帯、リストバンドの青、この2色の色味が違う。

インナーは紺系、後者は紫がかった明るい青。

これはどういう意図でそうなってるのだろう。

 

原作者のカラーイラストやアニメのカラーリングを見ても、同じ青色で統一されている事が普通だと思うが
何故こうなっているのか。

今迄も、見本から商品の色味が変わっている事がよくあるのがDBのフィギュア―ツで、
特にベジータやトランクスなどの戦闘服系は大体が見本の青から、紫系の青に変わっていた。

今回に関しては見本の時点で青色が使い分けられているので、なんなんだろうなという
疑問はさらに深まった。

普通にインナーの青で統一して欲しかったが。

 

あと、脚部分にグラデーションのような汚しの塗装が入っているが
曲げた膝の箇所にはそれが入っていないため、膝を曲げるとそこだけが浮くという仕様になっていた。

消しペンを綿棒で擦ったらグラデはわりとすぐ落ちたので、気になる人は消してみたらいいかと。
自分にはハナからグラデは不要に思えたし、余計なお世話といった印象だった。

そんな事より他に気にする事があるのでは、というか
青色を統一してくんないかな、という。

 

 

・まとめ

全体の感想をまとめると、

可動の範囲を重視して見た目を損なった箇所(胴体や肩回り等、つま先は論外)と

見た目を重視して、可動の融通が利かなくなった箇所(単軸の膝)とが

各部に点在し、

それらが自分にとっては非常に不快で、もれなく改悪に思えた

という感じになろう。

 

以前の素体において、そこまで大きな不満とされていなかったような箇所に
わざわざ可動範囲を増やして見映えを損ない

わざわざ見映えを重視して遊びやすさを犠牲にし、といった感じで

これで誰が得をするんだろうというのが自分の率直な感想である。

 

この商品が、ただこの一体で終わるならまだ
そういうピーキーな尖った機構を伴った実験作、として許せるが

悟空の頭部を変更して、道着にマークを付けたりしながら
共通の素体として使い回していくというなら話は変わる。

さらには、この可動機構を「正解」として、他のキャラクターにまで転用して導入するようなら

今後のシリーズ自体の色が完全にそれ一色に染まるという事になる。

出てくる商品が皆こんな肩の機構で、胴に隙間があり
膝が単軸で、つま先が過剰に曲がるような造りをしていたりしたら全くもって嫌だなぁと。

そんな原型師の独り善がりの詰め合わせ、のようなシリーズに成り下がったら

個人的には非常に残念なので、以前のままの方がまだよっぽどマシなのだが

巷の受け手の皆さんは、この原型師の腕に全幅の信頼を寄せており
今回の商品にも諸手を上げてマンセーしていらっしゃるご様子なので、

まあそうなっていくのだろうなぁという予感もあります。

自分としても、以前の素体を使った製品が不満の全くない素晴らしい出来だった等と言う気はさらさらないですし
可動機構にしても殊更凄いと思ってるわけでもないですが、

可動フィギュアとして、玩具としての遊びやすさや妥当性、
言い換えれば、無難さみたいなものは
以前の素体の方がずっと高かったとは思うので、

今回の急激な変化にはあまり付いて行けない部分も多いです。

以前の商品は、可動範囲がどうこうという以前に
頭部パーツの造形が稚拙な物が多かったので、その辺りは比較的改善されており
そこが評判の良さに繋がっている面もあるのでしょうが、

それは素体の見映えや可動機構とは別の話に思えるのですよね。

顔が良くなった! 体も可動範囲が増えて見映えが良くなったらしい!
完璧だ!
というように流されていってませんか?というような疑念を抱きます。

自分としては素体もだし、頭部の方もまだまだ改善の余地があると思いますし
受け手からの評判が良いという事で満足せずに
適宜改良を加えながら
商品展開を進めていって欲しいとは思います。

新素体に対しては、これまで言ってきた通りあまり好ましく思っていませんが
このように商品として世に出た以上、
長所や適した使い所を見出しながら
玩具としての可能性を探っていこうと思います。